マリー・アントワネット
フランス革命前夜の雰囲気を、社会的な描写はまったく省略して、マリー・アントワネットの視点からのみ描くという、かなり思い切った作品。セットや衣装の美しさを完全に前面に出した、宝塚歌劇的な、ビジュアル重視の映画といえる。
監督が女性ということもあり、マリー・アントワネットの心理描写も、徹底して一人の女性としての視点に立ったものになっている。妙にひねった歴史的解釈を含めるよりも、このぐらいの割り切りがあったほうが好きだ。
フランス革命を描こうとすれば、普通であれば、必然的にマリー・アントワネットのアクの強い性格を表現することに監督は工夫を凝らすだろうと思うけれども、この映画ではそういう趣味の悪いことはまったくしない。これは史実を下敷きにしたパロディーであり、別ものの物語なのだ。
そのため、時代考証や内容の正確性はあてにはならないので、飽くまでエンターテイメントとして、宮廷生活の洗練された雰囲気を楽しむのが正しい鑑賞の仕方なのだと思う、
「マリー・アントワネット」(2006年)
監督:ソフィア・コッポラ
出演:キルスティン・ダンスト