みんなのいえ
(三谷幸喜/東宝)
【コメント】
この映画が描こうとしているテーマは、喜びや苛立ちや辛さや楽しさといった、モノを真剣に作ろうとする過程に現れる感情すべてだ。
ある若い夫婦が郊外に一軒の家を建てることを決めるところから、物語は始まる。
一つの大きなモノ作りが始まり、たくさんの人たちの思いとこだわりが注ぎこまれ、そして対立が始まる。
新と旧、年長者と年少者、理想と現実の食い違いは何の制作の場でも普遍的に起こる対立だけれども、こだわりとこだわりの熱いぶつかりあいが、家という一世一代の買い物でくりひろげられると、とてもエキサイティングなものになる。
配役がまた素晴らしい。昔気質の大工に田中邦衛、洋風かぶれの気難しいデザイナーに唐沢寿明。その他のキャストもそれぞれ、ものすごく役柄に合ったセレクションがされている。
自分の意見を曲げないデザイナー(唐沢寿明)は大工の連中から反発を買うが、家が出来上がった後、大工の一人から「オレ、あんた好きじゃねえけどさあ、オレこの家好きだ」と言われる。モノを作る人間にとってそれは、最高の賛辞なのだろうと思う。
何らかの形でモノを作っている人に、是非とも観てみてほしい作品。