アイルランドの街を舞台にした映画という時点で、まず、いい。
映画というのは、メイドインどこなのかによって、多少なりともお国柄が出るものだと思うけれど、この映画もだいぶオリジナルな雰囲気がある。
まず、87分という短さがいい。この物語には必要十分な長さで、これ以上余計なエピソードを入れる必要はない、というちょうどいい時間。
あと、主人公の2人の名前がわからない、っていうところも最高だった。この作品には、名前というのも、絶対必要というわけではない要素なんだろう。
物語の展開も、なんか少しずつ予想を裏切る。映画だからといって全然都合よく事が進まなかったり、それほどドラマチックなわけではない、この現実感がたまらなくいい。主人公の金のなさや、中途半端に年をとった感じも、なんか妙にリアルだと思った。
わざわざチェコ語で「彼のこと好きなのか?」と尋ねたら、チェコ語で返されて、その言葉の意味がわからないというシーンは良かった。
こういう、「バッカだなあ!」って思うような場面がいろいろとあるのだけど、この、主人公の不器用さが沁みる映画だった。