これは、かなりいい映画だった。
アフリカの地域紛争がテーマになっていて、シエラレオネでRUF(革命統一戦線)がどういう蛮行をして、どういう経緯で何百万人もの少年兵や難民が生まれたか、ということがよくわかった。
ドキュメンタリー映画のような強いメッセージを持ちつつ、アクションやサスペンスの要素もあって、教訓めいた深刻さはあまりストレートには出されていない。
レオナルド・ディカプリオの世慣れた抜け目のなさが、やたらと頼もしくてかっこいい。こういう、ガラの悪い不良っぽい役はものすごくハマる俳優だと思った。白人ではあるけれども、アメリカ出身ではなく、ローデシア生まれという設定もいい。
アフリカの現地民が流暢な英語を話しているというところには違和感があったけれど、そこは、映画なので、進行上しかたないのだろうと思う。
この映画は、シエラレオネとケープタウンが舞台の中心になっているけれど、ごく一部だけ、コペンハーゲンとロンドンがあらわれる。この映画がスゴいのは、単にシエラレオネの内戦のひどさだけを語っているのではなく、「この悲惨な構造によって、実は誰が一番儲かっているのか?」という重要な事実を示唆していることだ。
広瀬隆氏の「赤い楯」を読んで驚いたことなのだけれど、ダイヤモンド業界と映画業界というのは、その上層部はいずれも強固なユダヤ人ネットワークによって占められていて、そこには当然、暗黙の情報規制もおこなわれているのだという。ハリウッド映画には、扱いにくいテーマがいくつも存在するのだろうということは想像に難くない。
そういうタブーを打ち破って、ダイヤモンドという華燭の世界に潜む闇を見せてくれた点、素晴らしい作品だと思う。
■ブラッド・ダイヤモンド(2008年)
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジャイモン・フンスー、ジェニファー・コネリー
監督:エドワード・ズウィック