前作を観ていないためか、ストーリーの細かい部分はよく理解出来なかったのだけれど、かなり綿密に作りこまれた、真っ向勝負の正統派映画だと思った。このダークな世界観も硬派だし、アクションのスピード感も相当いい。2時間半とかなり長い映画なのだけれど、その間、中だるみがほとんどない。
なんといっても、ド派手な敵役の「ジョーカー」の圧倒的な存在感が大きい。ディオに匹敵する、衝撃的なまでにイカれたヒールで、ジョーカーに比べたら、バットマンなんか影が薄くて、いったいどっちが主役なんだかわからないぐらいのインパクトだ。悪役も、これぐらい極端だといっそ魅力的に思えてくる。
この映画が素晴らしいのは、善対悪という単純な二項対立の関係だけでは語れない奥行きを持たせているところだ。バットマンもジョーカーも、どちらが善でどちらが悪ともはっきりと言い切れない余地を残している。そして、善悪両方の矛盾を同時に内に抱えるキャラクターまでも登場する混沌さ。アメコミのマンガは、勧善懲悪のシンプルなストーリーしかないんだと思っていたけど、これは予想を遥かに超える物語の深さだった。