ザ・スタンド
これは、かなり本格的にコワい作品だった。ホラー的に驚かせるところもあるのだけれど、基本的にはその、細部まで作りこまれた重厚な世界観と、物語によって引き出されるコワさなのだと思う。ざわざわした風のような音と、ギターの乾いた音色だけで作られたシンプルなBGMも、かなり、おどろおどろしい。
タイトルが「ザ・スタンド」だからというわけではないのだけれど、やたらと個性的でヘンな奴らが集まるところが、「ジョジョ」っぽいテイストの作品だと思った。
なんといっても、この、登場人物のキャラクター達の際立った特徴が、最大の魅力といえる。聾唖者や、放火魔や、知的障害者など、主要登場人物がここまでバラエティー豊かな作品が他にないだろう、というぐらいのカオスさだった。しかも、俳優がみんな存在感があってリアルだ。悪の大ボスであるFloggの怖さも、かなりハンパじゃない。スティーブン・キングのこの想像力は、やはりスゴいと思う。
アメリカのあちこちが舞台になっているので、色々な都市を見て回っているような観光気分を味わえるのも、良い点だった。ハリウッド映画などだと、ニューヨークやロスあたりが舞台になることが多く、それ以外の地方の州はあまり舞台にならないけれど、この作品は、アメリカ全体の姿がよくわかる。
最先端のCGを駆使した映画に比べれば、派手さでは当然劣るけれども、この作品は、映像もすごかった。マンハッタン島の出口で車が渋滞になって詰まってしまっている風景や、ネオンだけが光って無人のラスベガスなど、CGに頼らずに、ここまで荒涼とした景色を作り出すセンスは素晴らしい。