これは、期待を大きく上回る映画だった。
キャストに頼った、ありきたりのドラマかと思って観たら、全然違った。
「タイタニック」が、ディズニーランドの中の物語だとしたら、この映画は、ディズニーランドが閉園した後の物語だろう。エレクトリカルパレードが通り過ぎて、シンデレラ城が明かりを落とした後は、疲れて眠った子供をおぶって、両手にいっぱいの荷物を抱えながら、満員電車に揺られて家路に着かなくてはならない。祭りはいつか終わりがくる。そして祭りの後は、始まる前よりも一層に寂しい。
舞台は、1950年代のアメリカ。戦後の景気は上向きの雰囲気をみせていて、翳りは見当たらない。レボリューショナリー・ロードとは、そんな時代の郊外の住宅街にある、希望に満ちた通りの名前だ。閑静な新築の家に、2人の子供と共に幸せに暮らす夫婦・・のように見える。近所の誰から見てもそう見えるだろう。
しかし、人間の幸せというのは、傍目からはわからない。快活な会話と笑顔の一枚下には、どんな闇が渦巻いているか知れない。ふとしたはずみで、その闇は亀裂の隙間から、当人すら気づきもしなかった顔をのぞかせることがある。
この映画がいい作品だと思うのは、ものすごくたくさんの意味が、それぞれのシーンや会話の一つ一つに込められていると思うからだ。人々が話すセリフや、その視線と挙動とを注意深く観ると、そこに静かな崩壊の予兆が含まれていることがわかる。
この作品が扱っているのは、ものすごく普遍的なテーマだと思う。今から半世紀前のアメリカの話しであっても、これはそのまま、現代日本の話しだと言っても通用する変わらなさがある。
この哀しみと寂しさは、現代人が特有に抱えるものではなく、50年前にもやはりあったし、それよりもずっと前から変わらずに、生きる意味を問い続ける限り常に、人と共にあったのだろうと思う。
出演 : レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット
監督 : サム・メンデス
原作 : リチャード・イェーツ
【良かったシーン】
・大勢が同じような帽子をかぶって、電車に乗って通勤するシーン
・隣りに住む奥さんが、パリに移住するという話しを聞いたあと泣くシーン
・森から家に奥さんが帰ってくるのを、窓から旦那が眺めるシーン
【名言】
We’re running from the hopeless emptiness of the whole life here,right?
‘You just wanted out,huh?’
‘I wanted in. I just wanted us to live again.’
‘We were never special or destined or anything at all.’
‘What the hell are you doing in my house if you hate me somuch?
Why the hell are you married to me?
What the hell are you doing carrying my child?’