これは、かなりスゴい映画だった。
観た人の数だけの、違った感想と解釈が生まれそうな映画で、同じ西川美和監督の、前作「ゆれる」と同じく、何が正しいかということを一方的に示さずに、その回答を観る側にゆだねるという作り方は、とても好きだ。
この「ディア・ドクター」の場合は、作品の中心となっているテーマに関わっている人の数も多いし、無医村という問題や、医者の倫理という問題にも関係してくるので、その背景は更に複雑になっている。
鶴瓶が主人公というキャスティングには驚かされるけれど、これがかなり役柄にぴったり合っているところが、またすごい。
しばらく静止した状態が続く無音の「間」とか、田舎の道路をロングショットで撮り続ける場面とか、映像の撮り方が独特で、本当に上手いと思う。
映像の中にも、観る側にその意味を問うているところが多く、一回ではとてもすべてを理解し切れない情報量が凝縮されている作品だ。