隣り同士になっている部屋で、壁越しに伝わってくる「音」を通じて、無意識のうちに見知らぬ二人がコミュニケーションを重ねるという、なんとなくひと昔前のレトロ感がただようファンシーな映画。
時代は現代なのだけれど、舞台となっている洋館的なマンションが、やたらと古めかしい造りとデザインで、そこらへんも、昭和にタイムスリップしたような雰囲気を感じさせる。これは確かに、防音効果がまったく無さそうな壁だ。
起承転結がきちんとあって、転回で驚き、結びで納得させられた。設定にちょっとムリがある気がするものの、しかし世の中は、天上から俯瞰した視点では、この映画にあるような奇跡的な縁ばかりであるだろうと思うし、その不思議さを、こういうドラマチックな物語によって思い出すというのも悪くない。
出演:岡田准一、麻生久美子
監督:熊澤尚人