アメリカ(CIA)とアラブ(過激派テロリスト)の対立を描いた政治的な映画かと思いきや、その部分は割とエンターテイメントの材料として使われている感じで、あまり現実に即したリアルな感じにはなっていなかった。
これは、エンターテイメントで扱うにはちょっとセンシティブな内容すぎるのではないだろうか、と思ってしまう。せめて、監督が作品に込めたメッセージ性とかがあれば、双方の理解を手助けすることにもなるのかもしれないけれど、この作品の場合、特にそういう所もないので、なんか、アラブ世界の反応とかは大丈夫なのかと心配になる。
ヨルダンやアムステルダムやドバイなど、世界のあちこちに舞台が移っていくところはとても好きだった。こういう、日常生活では体験出来ない景色の中に入っていく映画というのは面白い。この作品は、その点で、街の映像がとても美しくて良い。
ラッセル・クロウは、役作りのためにわざと太ったのか、「グラディエーター」の時に見せた精悍さは影も形もなくなって、さえない中年のおじさんになってしまっている。その分、ディカプリオの野性的な行動力が目だって、銃撃戦もアラブ語もエキスパートという、ハイパーなやつになってる。
しかし、この映画で一番カッコよかったのは、ハニという、ヨルダン情報局のボスだった。スーツに身をつつみ、冷静な判断力と、「王」と呼ばれるだけの権力を持って、CIAと対等に渡り合っている。
このハニと比べると、ラッセル・クロウも、ディカプリオも、抜けているところだらけで、引き立て役になってしまっている感じだ。なんだか、いったい誰が主人公なのかよくわからない映画だった。
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