「ディープブルー」のスタッフが総力を結集して作った、巨大スケールのドキュメンタリー映画。
「ディープブルー」は「海」を舞台にしていたけれども、今回は、「地球」全体を、北極から南極に向かって旅する形でストーリーが展開してゆく。
やはり、とにかく、映像がスゴい。無数の渡り鳥が空を飛ぶところなど、CGと見まがうばかりの数の多さで、その、現実をとことんリアルに映すことによって究極の幻想的風景を作り出すという手法には「ディープブルー」と共通する美学がある。
この作品を見て思ったのは、地球という惑星の、その奇跡的なまでのバランスの見事さだった。
昼と夜の割合、酸素と二酸化炭素の割合、針葉樹林と砂漠の割合、公転面に対する地軸の傾きの割合、そのすべてが、たったわずかでもズレれば今のような多様な生物が生まれることはあり得なかった。
生物同士の関係でも、その絶妙なバランスに感心させられるところがいくつもある。
狼がトナカイを追うシーンがあるのだけれど、その二匹の走るスピードは見事に拮抗している。種類も、体の構造も違う動物同士であるにもかかわらず、逃げる側と追う側の差が、まったく縮まらない。トナカイが、石につまずくような失敗をしなければ逃げ切れるが、たったわずかでもミスをすると、その途端に狼に捕まってしまう。
象とライオンの関係というのも面白い。どちらも強い動物なので、昼間は同じ水場を共有して、お互いに争うことがない。しかし、夜になると、目が見えない象に対して、ライオンは完璧に夜目が利くため、力の均衡が崩れて、ライオンが巧みに集団で子供を狙えば象を狩ることも可能になる。
誰が作ったのかわからないけれども、どれも、とんでもなく精巧に出来た真剣勝負だ。
自分が目にすることがないだけで、今この瞬間にも、地球では数え切れないほどたくさんの生き物が、想像を絶する光景を繰り広げているのだということを感じた。
地球温暖化の防止ということを根底のテーマとしているらしいのだけれど、その点はあまりピンとこなかった。逆に、人間の営みによる温暖化などものともせず、その環境の変化に合わせて適応を続ける力を、地球と、地球上の生物は持っているのだと思わせる作品だった。
【earthホームページ】
http://earth.gyao.jp/
2008年1月12日から、各地の映画館で上映中。
この映画は、字幕版と吹替版があるのだけれど、吹替版のほうをお勧めしたい。
渡辺謙のナレーションが素晴らしかったことと、文字を読むよりも声で話しを聞いたほうが、映像の世界に深く入り込めるからだ。