いい映画だった。
設定的には色々とムリがあるので、リアリティーはあまり感じないけれど、思考実験として、もしこれと同じようなことが実際におこなわれたとしたら自分はどうなるだろうということを考えさせてくれる作品だった。
映画にとって大事な要素は、リアリティー以上に、その問題提起の深さであると思うので、その点、この「トゥルーマンショー」という映画は、ずば抜けて興味深いテーマを扱った作品だと思う。
この映画がいいのは、主人公の「トゥルーマン」が素直で単純で、ものすごくいいヤツだというところで、だからこそ、それを観るすべての人々が思わず応援したくなるようなキャラクターの持ち主だというところだった。
哀しいのは、それでも、それらの観衆の多くはトゥルーマンの本当の味方というわけではなく、単なる傍観者であるというところだろう。それだけに、この映画は、終わり方が最高に好きだった。
現代ほどに、テレビや週刊誌や小説も含めて、自分の外部に物語が求められている時代というのは、過去のどの時期にも存在しなかっただろう。
たとえば「あいのり」のようなTV番組によって、他人の人生を観て娯楽にするということが成り立つ文化というのは、自分自身の人生に大きなドラマが起こらないということに由来する、現実感覚が末期的に希薄になっている状況かもしれない。
この作品は、痛切なマスコミ批判であると思うし、そのマスコミに自分で思考する能力の大部分を預けてしまっている衆愚的な視聴者に対する批判でもあると思う。
【良かったシーン】
・ラジオのノイズで、エキストラの人達が全員耳を押さえるところ
・船が、セットの壁を突き破るシーン
・番組のプロデューサーとトゥルーマンの対話
・番組を見ていた、ピザを食べる守衛の最後の言葉
・トゥルーマンが雑誌を切り抜いてモンタージュ写真を作るところ