物語は、第一次世界大戦が終結した日から始まる。
20世紀初頭の、エネルギーに溢れていた時代のアメリカの空気というのは、すごく好きだ。その時代から、現代までの90年間を一気にみる形で物語は進んでいき、一人の人間の、誕生から死までの一生を見守り続けるような気分になる。
歴史ものではない、一般的なヒューマンドラマの作品にしては、上映時間が2時間47分とやたらと長い。でも、この作品は、一人の人生をクローズアップした壮大な年代記と考えれば、一種の大河ドラマのようなスケールがあっても不思議はない。
メインとなるのは一人の女性との関わりについてだけなので、それ以外の、枝葉末節といえるような部分をバッサリと切れば、話し自体はだいぶ短くなるに違いないのだけれど、そうすると、この作品の味はほとんどの部分失われてしまうだろうと思う。
この映画は、「色々な人と出会い、その後には必ず別れがあった」というたった一つのことを、膨大の時間を費やして表現している作品だからだ。
この映画を観て、つくづく感じるのは、時間の残酷さだ。
ルイジアナにある一軒の家が、繰り返し繰り返し登場する。
場所や建物は昔の姿のままなのに、時間は、そこに住む人間だけを容赦なく変化させていく。
自然の摂理に逆らって日々若返っていく人間を通して、「時計の針は決して逆には回らない」ということを逆説的にわからせてくれる、とても切ない物語だった。
■ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2009年)
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監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット