スティーブ・ジョブズ神の交渉術

スティーブ・ジョブズ神の交渉術
スティーブ・ジョブズ神の交渉術
アップルの創設者である、スティーブ・ジョブズがスゴい人だということは知っていた。でも、ジョブズが持っている、個性的な性格についてはまったく知らなかった。
この本で書かれているのは、ジョブズの偉業だけではなくて、その自己中心的で傲慢な性格と、情に決して流されない冷徹な意思と、そして周囲にまったく気を使わない強引な交渉術だ。
このワンマンなやり方は日本にはまったく馴染まない。ジョブズくらい主張が強いと、アメリカですら相当に浮くらしい。
ジョブズと一緒に仕事をするというのは、課せられる要求も高いし、きっと大きなストレスではあるに違いない。でも、一緒にいれば、何かスゴいことが体験出来るのではないかというワクワク感と、大きな障害があってもジョブズならきっと何とか取り除いてくれるという絶大な信頼がある。
三国志の曹操、BANANA FISHのアッシュみたいな統率力だ。
誰からも好かれる人徳のある経営者よりも、クセのある経営者のほうが、その人生のストーリーはずっと面白い。ジョブズのたどってきた道のりは、どんな小説もかなわない、生きる伝説だと思う。
【名言】
ジョブズは「執念の人」だ。それが人間関係や名誉に向かうと周囲を辟易させることもある。モノづくりに向かうとどうなるか。「ちょっといいもの」ではなく、「ものすごいもの」を目ざすことになる。
彼は携帯音楽プレーヤーに目をつけた。日本や台湾から数多く出ていた小型の音楽プレーヤーは、操作が複雑でめんどうだ。ジョブズから見ると、いずれも「クズ製品」であり、言い換えれば、まるでこの分野をアップルで総取りしてくれ、と言っているように思えた。(p.90)
スティーブ・ジョブズの下で働くのは大変なことだ。忠誠と能力が要求され、彼のメガネにかなわないと、あっという間に切り捨てられてしまう。にもかかわらず、なぜ多くの有能な人間がジョブズと働きたがるのかと言えば、
1)ジョブズと一緒なら、どこにもない「ものすごいもの」を生み出せる気がするから
2)その障害はジョブズがみごとなくらいに取り除いてくれるから
という二点に集約されるだろう。特に2)の交渉に関しては、不可能に見えれば見えるほど他人任せにしない。みずから乗り出してものにしてくる頼もしさだ。(p.106)