等価交換の法則

鋼の錬金術師 (1)
鋼の錬金術師(荒川弘/スクウェア・エニックス)

「鋼の錬金術師」では、錬金術の最も基本的な法則は「等価交換の法則」であると言っていて、それが作品の最重要テーマにもなっている。
何かを得ようとするならば、それと等価の何かを捨てなければならない、ということだ。
このことは、現実世界においても同じことなのだろうと思っている。
何かが上手くいっている人は、それと丁度釣り合う分だけ、何かについては上手くいっていない。逆に、何かがダメな時は、それと同じ分、他の何かは順調にいっている。
そのバランスは、目に見えるものだけでなく、たとえば身体や精神の健康のような、目には見えないものも含まれているから、とても気づきにくいのだと思う。
もし、すべてが上手くいっているように見えるとしたら、それは危険な兆候かもしれず、他ならぬ「命」を削っているということかもしれない。
だから、「自分が欲しいもの」を知るだけでなく、「自分が捨ててもいいもの」を知っておくことは、とても大事なことなのだ。
荷物を積みすぎた船は、沈む。
バランスを取るためには、何かを得ようとする前に、先回りをして、みずから何かを捨てていかなければならない。過積載になった時に、積荷を捨てることを惜しむと、船そのものが沈んで、積荷も人命もすべてが失われてしまう。
すべてを上手くいかせようとすることは、結局のところ、一番の下策なのだろうと思う。