陰謀の世界史

陰謀の世界史 (文春文庫)
陰謀の世界史(海野弘/文藝春秋)

世界の歴史の中には、20世紀以降だけを取り出してみても、不可思議な現象がたくさんある。ケネディ大統領の暗殺もまだ解明されていないし、911テロも、その真相は一体何だったのか、世間一般には誰にもわかっていない。
「それらの大きな歴史的現象は、特権階級とも言える一握りの人たちが裏で操っていたのではないか」というのが、陰謀史家といわれる人たちの歴史の見方だ。陰謀史家にいわせれば、フランス革命も明治維新も2回の世界大戦もすべて、秘密結社がたくらんだ陰謀だということになる。
その首謀者とみなされる団体には、フリーメーソンのような秘密結社もあれば、CIA、ユダヤ人、ロスチャイルド、財団、銀行、などあらゆる団体が挙げられる。
本書は、「陰謀」をテーマにしてまとめられているために、出来事の見方が偏っているので、その内容を鵜呑みにするわけにはいかないのだけれど、歴史の一つの見方としてとても面白い視点を与えてくれる本だった。情報が膨大すぎて、一回読んだだけではとても消化しきれない。
ロスチャイルド家の広大な裏社会ネットワークを網羅した、広瀬隆氏の「赤い楯」に匹敵する厚みがあった。
題材として扱われている歴史的出来事や、登場人物、国家関係がとても幅広いので、一冊の中にかなりの情報量が詰まったデータベースだといえる。その分、その内容を充分に理解するには現代史の知識が求められるので、関連する出来事を勉強しながら繰り返し読むと、さらに面白くなる本だと思った。