アウトサイダー(田邊剛/エンターブレイン)
ラブクラフトの「アウトサイダー」、チェーホフの「中二階のある家」、ゴーリキーの「二十六人の男と一人の少女」、その他にオリジナル作品である「呪画」数作を収めた短編集。
「二十六人の男と一人の少女」や、ラブクラフトの世界をマンガ化したということに興味を惹かれた本で、この、セレクションのセンスは素晴らしいと思った。
絵は、上手いという部類なのではないかと思うのだけれど、学生が教科書通りにコツコツとがんばって描いたというような、面白みがない絵で、コマ割りなどもオーソドックスすぎて、そこは、読んでいて退屈だった。
最近、著名な文学作品がマンガ化されて発刊されることが多いけれど、いずれもヒドいクオリティーで、せめてもう少しキレイな絵だったら、これをきっかけに興味を持って、原作を読もうという人も増えるに違いないのに、、と思っていた。
それらの中では、この「アウトサイダー」はかなりの力作だと思う。
そういえば、文庫版「伊豆の踊子」の表紙絵を荒木飛呂彦が描いていたけれど、ああいう異色のコラボレーションはかなり熱い。
表紙だけでなく、いっそ全編を荒木飛呂彦に描いてほしい。
【名言】
あなたと議論するつもりはありません。ただひとつ申し上げておきたいのは・・なにもせずにただぶらぶらしていても仕方ありませんのよ。貴方はなにかを成すことがお嫌いでしょうけど。(中二階のある家)(p.54)