香港

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香港というのは、奇妙に魅力的な場所だ。
東京の市街地を見慣れていると、ニューヨークや上海のような都会の景色には、もはやあまり驚きがない。多少のセンスの違いはあるけれど、単純化すれば同じ方向性の枠組みの中で作られた街という感じがする。
香港の中でも、表向きの顔ともいえるセントラル(中環)のような香港島の都心部は、マンハッタンと似たような雰囲気で、まったく面白味がないけれど、九龍半島の路地裏は、まったく別次元のロジックによって出来上がっている空間なのだと思う。
建築物が、まずスゴい。住居の密集の過剰さといい、やたらと細長く縦に伸びたバランスの悪さといい、複雑に入り組んだ構造といい、普通に考えたら大丈夫か?と思うような建物によって取り囲まれている。
以前、市街地の中に啓徳空港があった頃、信じられないほどビルの間近をかすめながら飛んでいく飛行機を見た時には、その非現実的な光景にものすごい衝撃を受けた。小さな土地の中に、とんでもないぐらいムリヤリにたくさんの物を押し込んでいる街だと思った。
この混沌さにもかかわらず、たまらない魅力を感じるのは何故なんだろうと思うけれど、日常とはかけ離れた、思ってもみなかった領域に引っ張り込まれるワクワク感が、そこらじゅうに転がっているからなのだろう。
表通りから一本外れた路地裏や、雑居ビルの中に一歩踏み込んだだけで、まったく予想もつかない展開が待っている。街中、いたるところが魔窟だ。この、無秩序が支配する香港の面白さと比べたら、見物料を払って入場するような、整備された観光地に、いったい何の面白さがあるだろうかと思ってしまう。