個性を捨てろ!型にはまれ!(三田紀房/大和書房)
個性を尊重しましょう、という今の教育トレンドに真っ向からの反論を展開した本。著者は「ドラゴン桜」の作者でもある三田紀房さんで、「ドラゴン桜」と同様の強いメッセージがこの本にも込められている。
「本当の自分なんて、ありもしないものを見つけようとするから、わけがわからないことになる。」「ひとむかし前まで日本がやってきた、個性を捨てて、型にはめる教育・組織こそが日本人にとって一番合ったやり方なんだ」という、かなり強烈な主張だ。
人によっては、「時代錯誤だ」「ナショナリズムだ」と強いアレルギーを示すかもしれない。しかしこの価値観は、自分にとってはとても共感出来る部分が多かった。
『1997年に神戸の児童連続殺害事件が起こったときにも、中学生が「どうして人を殺しちゃいけないの?」と質問して、大人たちが誰も答えられなかったという出来事があった。そんなもの理由なんかないのだ。「理屈じゃないんだ。ダメだからダメなんだよ」どうしてそう言えないのだろうか。(p.147)』
これと同じことは、藤原正彦さんの「国家の品格」でも強く主張されていた。
水戸藩の教育では、守るべき十箇条の規範の最後に「ならぬことはならぬものです」と書いてあったという。
子供の教育として、幼いうちから「ダメなものはダメなんだ」ということをきっちりと叩き込むということはとても重要なことだ。
子供に媚びて、ものわかりがよい親であろうとしたりすると、少しでも理不尽と思うことは通せなくなってしまう。
しかし、本当に大事なことは理屈ではないし、その大事なことをきっちりと体に染みこませることが教育なのだと思う。
「日本の常識は世界の非常識というが、それの何が悪い?」という開き直りも好きだ。日本の良い部分は、他の国にない日本独自の文化の中にこそある。それを、グローバルスタンダードの波にしたがって無くしてしまうのは、競争力を高めるどころか、長期的に見れば日本の競争力を壊滅的なまでに失わせてしまうことにになってしまうだろうと思う。
僕は、アシスタントの若い子たちに、いつも「普通の漫画作品を描け」と言っている。ちゃんと「普通」レベルで描けば雑誌に載ることはできるし、それを重ねていけば個性なんて後からついてくるのだ。いきなり世間をひっくり返すような大傑作を描こうとするから、「普通」レベルにさえ達しないのである。(p.31)
会社でも学校でも、あるいは国という単位でもかまわないのだが、組織がうまく機能していくために必要なものとは、なんだろうか。まず第一に挙げられるのが「誇り」である。自分はこの組織の一員なんだ、ということを誇りに思えれば、おのずと組織への忠誠心も出てくるし、献身的な協力だって惜しまなくなる。組織がバラバラになることもないし、上からの指示も素直に聞き入れるようになる。(p.112)
1997年に神戸の児童連続殺害事件が起こったときにも、中学生が「どうして人を殺しちゃいけないの?」と質問して、大人たちが誰も答えられなかったという出来事があった。そんなもの理由なんかないのだ。「理屈じゃないんだ。ダメだからダメなんだよ」どうしてそう言えないのだろうか。(p.147)