イギリス南西部、コーンウォール半島の野原のど真ん中に、なんだかとんでもない規模のエコセンターが、21世紀になって建設された。国家規模でおこなわれている「環境問題プロジェクト」であるらしく、とにかくその、やってることの大きさがハンパじゃない。
広大な敷地の中でひときわ目立つのは、2つの半球型のドーム。
この、王蟲のような施設は、その名も「バイオーム」という世界最大の温室で、普通のガラスと違い紫外線を通すようになっていて、全体が巨大な温室になっている。
片方は「地中海性気候」の温室で、もう一つは「熱帯雨林気候」の温室。そこに、世界中から様々な植物が集められている。地中海性気候の温室は快適だけれど、熱帯雨林気候のほうはやたらと蒸し暑くて、入った瞬間に、ジャングルの中にワープした気分になる。
普通の植物園と違うのは、一つ一つの解説がエコロジーの視点から細かく説明されていて、しかも、その解説が面白いことだ。
コーヒーの木には、その豆の収穫が手摘みであるために、いかに多くの安価な労働力が従事しているかが書いてあったり、サトウキビは食べ物なのか燃料なのかを考察していたり、マンガで説明したり、小道具が用意されていたり、とにかくあらゆる手でその植物にまつわるエピソードを面白く紹介している。
一番面白かったのは、ブドウの木の周りで乱痴気騒ぎをしている、ディオニソスと悪魔の像だった。ワインは人を堕落させる飲み物と言われます、なんてことが書いてある。
エデンプロジェクトの中には、社会科見学の授業のような感じで、小学校の生徒がたくさん来ていて、遊びまわったり、スケッチをしたりしていた。こういう植物園を小学生の時にじっくり見たら、きっとものすごく充実した学びになるんだろうと思う。
この場所は、陶土採掘場跡の広大な盆地を使用しているらしく、かなり交通機関のアクセスが悪い場所に建っているので、レンタカーのおかげでだいぶ楽に行くことが出来た。電車とバスだと、どこから行くにしても丸一日がかりになってしまうだろうと思う。
このエデンプロジェクトでは、どんな小額でもいいから、寄付をしたら、一年間入場料が無料になるという特典がある。その一つとってもそうだし、この施設全体が、多くの人々の善意を集めて、地球環境を少しずつでも良くしていこうという意気込みに満ちている。
行きにくい場所ではあるけれど、この、世界を変えるかもしれないドでかいプロジェクトは、その行く末を見届ける価値があると思う。