光の帝国―常野物語


光の帝国―常野物語(恩田陸/集英社)

なんか、SFというよりも、少年ジャンプ的な雰囲気の話しだと思った。「ジョジョ」とか「幽遊白書」みたいな、それぞれ個別の特殊能力を持った「能力者」が毎回、入れ替わりで登場する短編集の形になっていて、それぞれが独立しているので、これならずっと続編を書き続けられるんじゃないかと思う。
ちょっと前の時代の民話をイメージさせるのは、「遠野物語」に語感が似ているからだろうか。理路整然とした構成があるわけではなく、いきなり突き放すような終わり方をしたり、妖しく不思議な読後感が残るところも、民話っぽい。
【名言】
自分でも表現できない感情の渦の中に、冷たい恐怖が込み上げてきた。
その時、俺はそうするのだろう?目の前に、幸せな二人の娘が現れた時に、俺はその娘をどうするだろう?
こんなに風が強くて山じゅうの笹が揺れているのに、俺には何も聞こえない。なぜなら、俺はたったいま別れを告げているところなのだから。最愛の女性と、最愛の友人とに。「達磨山への道」(p.77)