デザインの自然学


デザインの自然学―自然・芸術・建築におけるプロポーション(ジョージ・ドーチ/青土社)

植物や生物など、自然界のあらゆるプロポーションには、「黄金比」やフィボナッチ数列の数字とぴったりと一致する比率が現れるということを、様々なサンプルを挙げて例証している本。
その範囲はものすごく広く、自然界に存在する生物はもちろんのこと、雪の結晶のような静物から、伊勢神宮やピラミッドのような建築物、仏像、ボーイングの飛行機、までとにかく多岐にわたる。
自然が作るデザインの中に、数学的にシンプルに表現出来る整合性があるということは疑問の余地がないのだけれども、この本で挙げられている量があまりに多いので、見ているうちにだんだん疲れてきてしまった。
その図と寸法の数字が何を示しているのか意味がよくわからない部分も多く、「それを言ったら、どんなものであっても、こじつければ意味がありそうな数字が出てくるのではないか」という気にもなってくる。
なので、この本は、学術書というよりも、自然のデザインの美しさを再認識するための美術書であると考えたほうがいい。
示されている比率の整合性についてはよくわからないけれども、たしかに、この本で取り上げられている数々のデザインは、有無をいわさずに、ただ美しいと思わせる力を持っている造形ばかりだと思う。
古今東西の、あらゆるジャンルの「人々を魅了するデザイン」を集めた大カタログと言えるような、夢のある本だった。
【名言】
 
仏陀は一言も言わないで説教したといわれている。彼は一輪の花を聴衆に差し出しただけであった。これが有名な「拈華微笑」である。パターンの言語、花の沈黙せる言語による説教であった。花のパターンは何について語るのか。(p.7)
 
自然におけるもっとも美しい例は、雪片である。どのひとつも違っている。しかし全ては、基本的な六角形のパターンによって統一されている。各雪片は、12回も反復され反転されている、ひとつのパターンに限定されている。このような単一性は、すべての無機的な結晶のパターンの特徴である。生命体よりも秩序と統一性を持っている。(p.85)