冷たい密室と博士たち


冷たい密室と博士たち(森博嗣/講談社)

かなり本格的にロジック中心の、硬派な推理小説だった。
奇抜な発想で驚かせるというよりも、詰将棋のように理詰めで謎を解いていく感じ。
あまりトリックの部分には興味がなくて、読み飛ばしていたので、細かい内容はよく理解出来なかったのだけれど、緻密な設定であることはよくわかった。
期待をしていた、含蓄のある言葉も、この作品ではやや少なめ。うまく出来ている小説だとは思ったけれど、新しい発見とか気づきという面では、あまり魅力を感じなかった。

【名言】
星空を見るのはひさしぶりだ。そう、一年まえのあの事件以来ではないか・・。忙しい毎日でそんな余裕はほとんどない。こういった特別な機会でもないかぎり、人は星を見ないものかもしれない。それにしても、特別な機会である。(p.128)

常日頃から、犀川は、暦や時間に関する現行のシステムに強い不満があった。何故、一時間を百分にしないのか。一日は二十時間にできないのか。一ヶ月を二十八日でちょうど四週間にすれば、来月の何日は何曜日などといちいち考えなくても良い。特に、祝日などのイレギュラな日が嫌いだった。(p.239)

「犀川先生なら、どう答えられますか?」国枝桃子が無表情で尋ねた。「学生が、数学は何の役に立つのか、ときいてきたら」
「何故、役に立たなくちゃあいけないのかって、きき返す」犀川はすぐに答えた。「だいたい、役に立たないものの方が楽しいじゃないか。音楽だって、芸術だって、なんの役にも立たない。最も役に立たないということが、数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。人間だけが役に立たないことを考えるんですからね」
「何故、役に立たなくてはいけないか、ですか・・。うん、それはいい」と高校教師が呟く。
「そもそも、僕たちは何かの役に立っていますか?」犀川はおどけて言った。(p.399)

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