生物と無生物のあいだ

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)
生物と無生物のあいだ(福岡伸一/講談社)

生物学というのは、とても面白い学問だと思うけれども、それがいまいち一般に伝わりにくいのは、生物学者の中で、それを面白く伝える文章を書ける人の人口が少ないからなのだと思う。この本は、詩的な表現が多く、それがちょっと過剰な部分もあるけれども、生物学の面白い部分をとても上手く抽出して表現している。
生命は、人智の予測を超えるほどの精巧な仕掛けを用意していることが多い。人は、その仕掛けを発明するわけではなく、ただ発見するだけなのだ。その点、エンジニアよりもクリエイティブさにおいては劣るけれども、その代わりに、神の業としかいいようがない、見事な生命の構造を発見するという大きな喜びがある。この本を読んで、その一端を知るだけでも、生物学というのはなんと驚きに満ちた世界なんだろうと思いしらされる。
こういう、一般に知られていない分野を照らして世間に広めるノンフィクションというのは、閉じた世界に光を与える、大きな役割を果たしていると思う。
【名言】
人は瞬時に、生物と無生物を見分けるけれど、それは生物の何を見ているのでしょうか?そもそも、生命とは何か、皆さんは定義できますか?(p.3)
すべての秩序ある現象は、膨大な数の原子が一緒になって行動する場合にはじめて、その「平均」的なふるまいとして顕在化する。原子の「平均」的なふるまいは、統計学的な法則にしたがう。そしてその法則の精度は、関係する原子の数が増せば増すほど増大する。ランダムの中から秩序が立ち上がるというのは、実にこのようにして、集団の中である一定の傾向を示す原子の平均的な頻度として起こることなのである。(p.141)
ある場所とあるタイミングで作り出されるはずのピースが一種類、出現しなければどのような事態が起こるだろうか。動的な平衡状態は、その欠落をできるだけ埋めるようにその平衡点を移動し、調整をおこなおうとするだろう。その緩衝能が、動的平衡というシステムの本質だからである。(p.263)
生物には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことのできないものとして生物はある。生命とはどのようなものかと問われれば、そう答えることができる。(p.271)

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