喪男の哲学史

喪男の哲学史 (現代新書ピース)
喪男の哲学史(本田透/講談社)

古代ギリシアの哲学から現代までの、長い哲学史を、作者独自の史観から一冊にまとめた本。話し言葉調の文体で、かなり軽めなテンポで書かれてはいるけれども、その中身はとても濃く、哲学の発展の歴史がものすごくわかりやすく解説されている。
思想を解説する際には、マンガなど現代のサブカルチャーを題材として取り上げられていることが多く、「現代の作品でいうと、この思想はつまりどういう話しに似ている」という話しに噛みくだいて、簡単な言葉に落とし込んで説明をしているので、わざわざ難解な言葉を使った哲学解説書に比べて、はるかにわかりやすい。
古代から現代までの哲学の通史を概略として理解したいという人に、かなりおススメの一冊。
【名言】
マルクスも含め、十九世紀から二十世紀にかけての西洋社会は三次元を力業で書き換えようとする「一元論主義」一色に染まっていたと言っていいでしょう。ですから、常識では考えられないようなことが実験的に現実の下で行われたりしたわけです。二度の世界大戦とか断種とか民族浄化とか原爆投下とかもう滅茶苦茶です。こういう巨大な悪事をなす人間は、だいたい一元論者なんです。空想と現実の区別がついていないんです。(p.208)