マトリョーシカ

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今までに観た舞台で最も衝撃的だった作品。
1999年にPARCO劇場でこの舞台を観た時、そのあまりの完成度の高さに言葉が出なかった。
モーツァルトの音楽は、曲全体のバランスがあまりにも完璧であるゆえに、人間が作ったものとは思えないと言われることがあるけれども、同じ種類のスゴさを、この脚本からは感じる。
「劇中劇」というのは、演劇ではよくある手法だけれども、この「マトリョーシカ」はそれをさらに進めて、演劇とは一体何なのか?ということを、これ以上ないくらいに突き詰めた作品だと思う。
ステージがあるということが演劇の必要条件というわけではなく、緞帳が開いてから閉まるまでが上演の時間であるという決まりもない。その空間に「演じる人」と「観客」さえ揃っていれば、それがいつ、どこであっても演劇というのは現出する。
この脚本を活かして、映画やテレビドラマ化することが出来るだろうか?と考えると、やはりおそらく、舞台ほどの内容には到底及ばないだろうと思う。舞台でしか出来ない仕掛けを、惜しげもなくすべて出しきっていて、演劇向けに極限まで最適化された作品だからだ。
登場するキャストはたったの3人。全員、とても上手いのだけれど、特に、松本幸四郎の上手さは芸術的だと思う。自然で、存在感があって、彼にしか出せない軽妙で洒脱な雰囲気がある。そこから生まれるユーモアは、他の誰にも真似出来るものではないだろう。
この作品は、いくつもの仕掛けが何重にも組み合わされていて、ミステリーのような色合いも濃い。タイトルになっている「マトリョーシカ」というのは、ロシアの入れ子人形のことで、まさにこの作品には、そういう、マクロコスモスとミクロコスモスが組み合わさったような美しさがある。
演劇を知り尽くした三谷幸喜さんの真骨頂ともいうべき作品だと思う。
■『マトリョーシカ』
作・演出:三谷幸喜
キャスト:松本幸四郎、市川染五郎、松本紀保
上演:1999年4月~5月

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