QUIDAM

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過去に観た舞台芸術の中で、シルク・ドゥ・ソレイユの「キダム」は、ダントツで最も感動したアトラクションだった。パフォーマンスの技術度の高さはもちろん、その世界観や音楽や、細部まで作りこまれた演出も含めて、これほどにどうしようもなく魅了される舞台はなかった。
日本での公演がおこなわれたのは5年前になるけれど、それ以降、日本には来ていないし、今のところ来る予定もない。シルク・ドゥ・ソレイユでは、それぞれの演目ごとにチームが組まれていて、そのチーム単位で世界中の国を巡業しているらしく、今はイギリスで上演をしている。
 
今回、ニューキャッスルの「Metro radio Arena」で観た「キダム」も、最高だった。前に観た時の感動をさらに上回って、より洗練された内容になっていた。
中でもよかったのは、最初の演目である「ジャーマンホイール」、2つ目の「ディアボロ」、最後の演目「バンキン」。
特に、中国ゴマを使ったパフォーマンスである「ディアボロ」は、鳥肌がたつほどに本当に美しい。純粋にこれを観るためだけにイギリスに来ていたとしても、まったく後悔はないだろうと思った。
おこなわれる演目と、その順番は日本での公演時と変わりなかったのだけれど、インターミッションとしておこなわれる寸劇の内容がまったく変わっていた。観客参加型のコントになっていて、その場でアドリブ的に寸劇を作り上げる構成になっている。これは、観客の温度を考えて、国ごとにやり方を変えているのかもしれない。
ニューキャッスルでは、観客のノリがとても良く、素晴らしいパフォーマンスを魅せるたびに大きな拍手と喝采と口笛が劇場内に響き渡って、それもまた楽しかった。
今回、再認識したシルク・ドゥ・ソレイユの舞台のスゴさは、そこに言葉がまったく介在しないために、万国共通で誰がみても同じように楽しむことが出来るというところだった。言葉をまったく使わずに、これほどまでに人を動かすものを作りあげるというのは素晴らしいことだと思った。