ネクスト・マーケット


ネクスト・マーケット(C.K.プラハラード/英治出版)

世界には、1日2ドル未満で生活する貧困層(BOP:Bottom Of the Pyramid)が約50億人いるのだという。
この本に、とても共感をおぼえるのは、発展途上国の貧困層の人々を、「援助してあげる」対象として見ているのではなく、対等なビジネスの顧客として見ているということだ。
1日2ドル未満の収入の人を相手に、先進国の企業は商売出来ない、というのは、そもそも先入観によって勝手に作り上げた前提で、見方を変えれば、世界にはものすごく巨大な市場が手つかずのまま残されているということなのだ。
発展途上国に対して何かをしようとした時、一番考えなくてはいけないのは、実効性ということなのだと思う。
どれだけ見栄えのいいボランティア活動でも、それが実際に本当に誰かの役に立っているのか疑わしいものもあるし、どれだけ多額の資金援助をしたとしても、それがまったく効果のない使われ方がされていたり、きちんと末端までその援助が行き届かなければ、何の意味もない。
この本は、徹底的に現実的に、どうすれば貧困層に対してビジネスを成立させることが出来るのかということを追求している。それは、自分が持っている先入観をくつがえすような内容が多いのだけれども、言われてみれば納得!ということばかりだった。
多くの大企業が、実際にこの本に書かれているような方法論で発展途上国でのビジネスを成功させることが出来れば、その企業自身のノウハウや技術力も大幅に拡大されるし、結果的に、途上国の人々の生活の質を向上させることにもつながる。
論文調の形式と文章なので、ちょっと読みづらいけれど、とてもたくさんの気づきがあった本だった。内容は大きく第一部と第二部に分かれていて、第二部は過去に実際におこなわれた活動のケーススタディーなので、第一部のみを読めば、そこに要点は充分に含まれている。
【タメになった点メモ】
・中国は、法制度は整っていないけれど、賄賂をわたせば融通を利かせてくれる官僚がいるので、それによって一応、非効率ながらも物事は動いていく。逆に、インドは法制度は整っているけれど、それを実行させる行政力が充分でないから、なかなか物事は進まない。
・BOP市場では、シャンプーのような日用品「使いきりパック」がよく売れる。貧困層の収入は不安定で、多くの者が日当で生計を立てているので、現金があるときだけ買い物をし、その日に要るものだけを買う傾向にあるからだ。
・貧困層は、固定電話などのインフラがない分、いきなり3G携帯電話やiPhoneのような最先端の技術にワープすることが出来る。その普及は、既に旧来のインフラがある層よりも速く、爆発的に広がる。
・貧困層には「貧困による割増」という理不尽な不公平がある。ダラビの貧困者は、貸金業者から金を借りるのに600~1000%の利子を取られる。ここに、25%の利子で参入する銀行は、充分すぎる利子を得ながら、消費者からしてみれば銀行が参入することで、利子が24分の1に激減することになる。
【名言】
本書は、「実際にどうすればうまくいくのか」について考察している。これは、「誰が正しいか」を言い争うことではない。また、「何がいけないのか」にも、あまり関心はない。うまくいかない可能性などいくらでもあり、実際にそうなったケースは山ほどある。大切なのは、「数少ない成功事例から学べることは何か」で、それが今後の道筋を示してくれる。(p.14)
HLLのCEO、M・S・バンガは、BOP市場における真の難題とは、「I字カーブ」に対応しなければならないことだと述べている。ほとんどすべての大企業では、一連の経営プロセスを「緩やかな成長」に合わせているが、I字カーブはそれをくつがえす。「I字カーブ」は功罪二つの面を持つ。たとえば、最近の携帯電話は、単なる電話にとどまらず、時計、カメラ、コンピュータ、ラジオ、テレビの機能を備えている。では、携帯電話があるのに、わざわざ時計を持つ必要があるだろうか。つまり、I字カーブは、イノベーションを急速に推進する反面、従来の市場を急速に消滅させる可能性を持っているのだ。(p.104)
エジプトでは合法的に土地を取得して登記するには71の手続きが必要であり、31の機関を通さなければならないという。(p.155)
汚職とは、特権的に資源へアクセスできるように手配し、時間的な価値をお金に換算することである。つまり、特権的なアクセスのための市場メカニズムなのだ。官僚は、細かい条例を利用して、情報や資源へのアクセス、透明性、そして時間を支配しているのだ。(p.156)
BOPの人々に共通する問題の一つは、「アイデンティティ」がないことである。社会の片隅に追いやられ、選挙人登録、運転免許、出生証明などの「法的なアイデンティティ」を持っていないことが多い。パスポートであれ、社会保障番号であれ、我々が当たり前と思っている法的に身分を証明する手段が彼らには与えられていない。あらゆる場面で、彼らは法的に実在するものとして扱われていないのである。法律上で実在していなければ、彼らは近代社会の恩恵を受けられない。(p.189)
ソーシャルブックシェルフ「リーブル」の読書日記

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