海獣の子供


海獣の子供 1~3巻(五十嵐大介/小学館)

ジャンル的には何というのだろう。自然と人間の共生がテーマになっていて、創世記や神話の要素もあり、舞台を海にした「もののけ姫」のような、独特の雰囲気がある。
深い森の中というのも、人智の理解を超えた空間であると思うけれど、深い海の底というのは、それを更に凌駕する、未知の生物が棲む前人未到の領域だ。
1、2巻あたりまではまだ日常生活の延長としての導入編で、3巻からいよいよ佳境に入ってくると、急激におどろおどろしさを増してくる。ブラックマンタの腹に浮き出る「神の眼」というモチーフにはかなり驚いた。
海の中こそは、人間がまだまったく本当の姿を理解していない、正真正銘の神域であるということがよくわかる。4巻から先、どういう展開になっていくのか、ものすごく楽しみな作品だ。
【名言】
この世界に在るもののうち、僕ら人間に見えているものなんて、ほんの僅かしかないんだ。
宇宙を観測する技術が進んでわかったのは、どんな方法でも観測できない「暗黒物質」があるという事。
宇宙の状態から、暗黒物質が「ある」事だけは推測できる。宇宙の総質量の90%以上は正体不明の暗黒物質が占めている事になる。
僕たちは、何も見てないのと同じだ。この世界は見えないもので満たされていて、宇宙は僕たちに見えているよりずっとずっと広いんだよ。(2巻p.259)
深海の全く太陽光の届かない世界での、300℃の熱水と地中からわき出す猛毒の硫化水素やメタンを栄養源とする生態系。
この生物群は硫化水素の化学反応エネルギーで成長するバクテリアと共生し、彼らのつくる有機物を吸収して生きている。それは太陽による光合成に100%依存している僕たちとは全く異なる生態系だ。(3巻p.104)
鯨の脳皮質は人間よりはるかに大きく発達している。体の機能は使われるから発達するんだから・・きっと鯨は考えてる人だと思う。
天敵もなく殺し合いもない彼らはきっと、人間とは違う発想をするはずだよ。そして人類よりずっと古い歴史を持っている。彼ら特有のコミュニケーション能力を考えると、非常に高度な知の体系を作り上げているかもしれない。(3巻p.199)

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