Interpreter of Maladies(Jhumpa Lahiri/Mariner Books)
ジュンパ・ラヒリの短編集で、9つの短編が収められている。
日常的な風景を題材にしながらも、それを素朴に淡々と描写している話しもあれば、かなり意外な方向に話しが進んでいくものもあった。どれも短い短編ばかりだけれども、この短さの中で、ここまでの余韻を読後に残すというのはスゴいことだと思う。
特に良かったのは、最後の「The Third and Final Continent」という短編で、カルカッタ→ロンドン→ボストンと、三つの大陸を移り住んだインド系移民を主人公とした物語だ。著者自身も、アメリカに住むインド系の二世で、どの話しもみんなインド系の人々が主人公になっている。
といっても、ほとんどの物語の舞台はアメリカで、登場人物の名前がインド系の名前だというだけで、それほど強く「インド」を感じさせる話しはないのだけれど、そこにあらわれる感覚は、一般的なアメリカとはやはり少しだけ違っている。それは、登場人物の食べ物や衣装にもあらわれているし、もっと微妙なニュアンスとして、考え方や文化にもあらわれている。
これは、世界規模の文化の中で強い主導権を持っているアメリカという国の中においてマイノリティであるインド系移民の視点からしか書けない作品だろうと思う。刺激的な描写はまったくないのに、強い印象を残す、不思議な短編集だった。
【名言】
When she whipped out the hairbrush, the slip of paper with Mr.Kapsai’s address on it flutterd away in the wind. No one but Mr.Kapsai noticed. He watched as it rose, carried higher and higher by the breeze, into the trees where the monkeys now sat, solemnly observing the scene below.(p.105)
As strange as it seemed, I knew in my heart that one day her death would affect me, and stranger still, that mine would affect her.(p.282)
At last Mrs. Croft declared, with the equal measures of disbelief and delight I knew well:
“She is a perfect lady!”
Now it was I who laughed. I did so quietly, and Mrs. Croft did not hear me. But Mala had heard, and, for the first time, we looked at each other and smiled.(p.282)