『変な家』独特な着眼点でテンポがよいライトミステリー


『変な家』(雨穴/飛鳥新社)

間取り図の不思議さを題材にしたミステリーという着眼点は面白かった。

ただ、良かったのは着眼点のみで、ミステリーとしては全体的にあまり感心するような出来栄えとは思わなかった。

前半の導入のゾクゾクするような気味の悪さはいい。
この不気味な家からどういう事件が起こっていくのかというのは、初めての感覚だけに、かなり気になった。
しかし肝心の、謎解きの部分が強引すぎて、期待外れだった。

「左手供養」の因習というのは意味不明すぎるし、そんなものを真に受けて律儀に実行をしようとする人がいるとも思えない。

平屋家屋での、間取りを利用したトリックも稚拙すぎて、そんな家に住んでたら疑いをもたないはずがないし、誰かが死んだら外部に隠せるはずがない。

解決編で届く手紙も、一人語りで語るには長文すぎて、さすがに現実的じゃないだろうと思った。

作者の雨穴さんはYouTube出身らしいので、この本のターゲット層の読者は、本格的で重厚なミステリーが読みたいわけではなく、テンポがいい、ライトな本を求めているような気がする。

であるならば、たしかにこの本は、会話調で余計な描写がなくて読みやすいし、ロジックも単純明快なので、好まれるのだろうと思う。