グラン・トリノ

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これは、かなり渋い。
すっかり老け込んで、完全な老域に入ったクリント・イーストウッドだけれども、この役を演じることが出来るのは、彼以外にはあり得ず、すばらしくいい仕事をしていると思った。
タイトルになっている「グラン・トリノ」というのは、1972年のクラシックカーのことで、これが、古き良きアメリカを体現する、象徴的なアイテムになっている。
同じく、骨太なアメリカンスピリットとでも言うべきものをキャラクターとして示しているのが、主人公のウォルトで、しかし、その精神がそのまま通用するのは昔の時代の話しで、現代においては完全に時代遅れの頑固オヤジになってしまっている。
この映画は、多くのメッセージを含んでいたと思うのだけれど、今の、アメリカが生まれ変わろうとしている時代に、こういう作品が出てくるというのはとても意味深長だと思う。
昔の、元気があった時代の強引なやり方を通そうとしても、周りはまったくついてこない。異なる価値観を持った人々との関わりの中で、その孤独を、どのように昇華していくべきなのか、ということを、クリント・イーストウッドが身をもって示しているのがこの作品なのだろうと思う。
DVDには、インタビューの特典映像がついているのだけれど、ひたすらアメリカのビンテージカーのことばかりをスタッフが語っているというのがスゴい。映画の中に登場したキャストも、悪役まで含めて、完全に素になって嬉々として車のことを熱く語っているのが笑えた。