神様はいますか? (田口ランディ・新潮社)
【コメント】
「人生は生きるに値しますか?」「愛とは何ですか?」など、哲学的な命題ばかりを集めて、それに作者が答える形で書かれたエッセイだけれども、どのテーマをとっても、その回答が面白い。
テーマは形而上のものであっても、それに対する作者の考え方は空論ではなく、現実に根付いた経験と、それを元に地道に積み上げた論理から生まれていることがわかる。
感覚的な事柄に対して感覚で答えているのではなく、ロジックで答えていて、その主張はとても明瞭で、理路整然としている。
難しいテーマであったとしても、慎重に一つずつ考えを進めていけば、たとえ学者でなくとも、その人なりの結論に間違いなくたどり着ける。「考える」ということは本当に面白いことだいうことを教えてくれる本だった。
【名言】
人間関係において自分が勝手に努力して、疲れて、そして相手を憎み出すというのは、私がずいぶんと繰り返してきた過ちだ。私は他者を「話せばわかる」と思っており、その点においてまったく傲慢な人間だったのだ。(p.57)