一条ゆかり『プライド』一体誰がこの最終巻の結末を予想し得ただろうか?


プライド 全12巻(一条ゆかり/集英社)

ジェットコースターに乗っているような、息もつかせぬ勢いのまま最後まで突っ走るテンションがスゴい。次の展開がまったく読めない。一体誰が、この、最終巻の結末を予想し得ただろうか。

すべての面において相容れない主人公同士の、女対女のぶつかり合いが激しすぎて、コワいぐらいだった。それでも、音楽という共通の基盤の上では、他の誰よりも共感し合うというのは面白い。

全体的に、女が強すぎて、男はどれも霞んでしまっているのだけれど、ただ一人、神野氏だけは特異な存在感をみせている。爬虫類的な冷たさがあって、気持ち悪いんだけれど、意外にも気がきいたり素直だったりして、だんだん「実は、結構いいヤツなのでは」と思えてきた。

主要登場人物の9割が、何らかの形でブッとんでいる変人なので、たまにマトモな人(タミちゃんとか)が出てくるとなんだかホッとする。衝撃のラストまで、ノンストップでひたすら濃い内容だった。

名場面


どんなにみっともなくっても、与えられたチャンスに食いつく事。
その道の一流の裏と表を知る事。(1巻p.21)


人には向き不向きがある。丈夫で安っぽい野の花じゃないだろ。
君はね、温室で大切に育てられて初めて価値を発揮する大輪のバラだ。(1巻p.151)


蘭ちゃんのピアノに神野さんからの花束と拍手・・
いつもそうだ。あの女が私をみじめにさせる。
私が欲しくてたまらないものを、あの女は易々と手に入れるのよ!(2巻p.34)


聞く人の胸にまで届かない。一番大切な感動が無いんです。(2巻p.120)


いつまでたっても、初めて会った時に味わったみじめさが消えない。
自分の卑しさが、うす汚さがみじめになる。
この女が汚れればいいのに、不幸になって泣けばいいのに。(3巻p.73)


そうね、利用させてもらうわ。
あなたも、あなたの恋も。
そうやって素敵になって、私に沢山のチャンスをちょうだいよ。
広告塔にするには、あなたくらいぴったりな女はいないわね。(3巻p.106)


「相変わらずだわ、史緒さん。いつも正しくって。あなたのそういうとこ、大嫌い。気持ち悪い」
「こうしか生きられないの」
「私も、こう生きるって決めたの」(4巻p.47)


「君が遊びが出来る女ならOKだ」
「遊びで・・いいです」(4巻p.160)


なんでよ!なんでいつもあんたばっかり!(5巻p.8)


なんでも時があるのよ。
うまくいく時、いかない時。
今は押す時か、引く時か。
自分は今何をする時か。
それを間違えるから、うまくいかないのよ。(5巻p.39)


「ごめんなさい。止まらないんです。ほっといて下さい」(5巻p.97)


ピアノって、こうやって弾くんだ・・
知らなかった俺・・
自分が思っていたよりもっともっと、ピアノが好きなんだ(6巻p.47)


双子でも姉妹でも、友達ですらないのに、
どうしてか互いがどう歌いたいのか、自然に解る。
憎んでも離れても、またこうして音を重ねる度にお互いを認めてしまう。
この不思議な関係を、人は何と言うのだろう。(9巻p.55)


今、俺は、奇跡を見ている。
あの萌ちゃんが史緒クンに手をひかれて、目の前を歩いている奇跡を。(9巻p.125)


ただの優等生から、本物になるのか!?
ほんの一握りの歌手にしかもらえないギフトを、シオはもらおうとしているのか!?(10巻p.93)


私も妬みましたけど、史緒さんは成功するとも思ってました。
あの人は立ってるだけで、人の目を奪うんです。
そういう持って生まれたオーラには絶対かなわないですよ。
主役になる人生を歩む人って、最初から主役なんです。(11巻p.161)