ヒメアノ~ル 全6巻(古谷実/講談社)
なんだかまったくよくわからないまま、唐突に完結してしまった。
連載開始当初は、とても期待させられたし、その後の展開もかなり盛り上がっていたにもかかわらず、これまでの伏線すべてを放ったらかしにしたまま、崩れ落ちるように絶命した。内容もシュールなら、終わり方まで不条理劇のような作品だった。
同じような道筋をたどって終了した「シガテラ」は、それでも、ラストがとても好きだったのだけれど、この「ヒメノアール」は、意味を読み解くのも不可能なぐらい、投げっぱなし感がある。
それでも、田中が絡んでいる話し以外のところは良く、主人公の同僚の安藤さんや、山田さん、スポーツインストラクターの織田さん、ジョージのエピソードなんかは、それぞれ、そうとう良かった。
ストーリーは気にせず、毎回読み切りの短編として読むと、かなり笑える。
【名言】
もう戻れないぞ・・
僕はずっと・・
一人ぼっちで生きてきた・・
だけどもうダメだ・・
ユカちゃんのいない世界には
怖くて戻れないぞ?(3巻p.21)
20代の頃は「別にずっと一人でも平気」って・・根拠のない自信があったけど、
35歳を越えてから急に現実が見えてきて・・これからの自分の事で頭がいっぱい・・
私は客観的に・・このままずっと結婚できず、一人で生きていくんだと思う・・
だから老後も一人ぼっちで・・さびしく死んでいく可能性大。
その不安を打ち消すためには、毎日がんばって働くしかない・・
女一人の老後には少しでも多くのお金が必要だし・・年金なんてあてにならない。
ぜいたくもせず、ただ、ひたすら貯金してるのが私のなってしまった「大人」。
自由のカケラもない・・(3巻p.62)
聞けよ河島
オレの人生は充実してるぞ
お前の言うとおり、オレがバカだってことは認めてやるよ。
でも、もう、その辺のクソみてぇにつまらない奴の・・
3人分くらい生きたんじゃねぇの?
だからぜんぜん満足してるよ。
バカでも変態でも、何でもいいんだ(4巻p.149)
「終わったよ」
「え?」
「何かね・・そのA藤さんて人・・職場でいろいろあったみたいで・・もう修行・・やめちゃったみたいよ?」(4巻p.195)
今一瞬・・それっぽい事を大きな声で言われたけれど・・
「ああ・・やっぱりコイツとは会話が成立しないな」と再認識をした安藤。(5巻p.46)
この地球儀を・・「ほぼ完全に支配した」と、とんでもないカン違いをしているサル共がいるだろう?
いっつも何かに怯えてて、すっごく弱くて、すぐ死んじゃうサル。
実はこの世のほとんどの事を、自分自身の事すらよくわかってない連中だ。
そんなのがギュッと集まって暮らしてるもんだから、怖すぎて一応ルールを作ったんだけど、
それがまたザックリとしたクソみてぇなルールでさ。
まいったよ。
オレみたいな変態ザル完全に無視だ。(5巻p.200)
毎日が平凡すぎて・・ただダラダラと時間が過ぎるのが怖いって・・
あまりにも何も無い人生で・・それが不安だって・・
今思うと・・とんでもなくぜいたくな悩みですね・・
悩んでたのは事実だけど・・甘っタレもいいとこですよ。(6巻p.35)