MASTERキートン


MASTERキートン(全18巻)(勝鹿北星・浦沢直樹/小学館)

「人生を変えた本」を挙げるとしたら、自分の場合はまず第一にこの作品を選ぶだろう。

「マスターキートン」によって与えられた影響は2つあって、一つには、ヨーロッパの文化についての知識と憧れを植え付けてくれたこと。

そして、もう一つは、考古学者という職業と、歴史という学問についての興味をおおいにかきたてられたことだった。

物語の舞台はヨーロッパを中心に世界中に場所を移していて、プロットがとても緻密であることと、風景の描写が正確であることで、色々な街を旅しているような気分になる。

日本人とイギリス人のハーフである、平賀=キートン=太一の生活は、インディージョーンズほど波乱万丈なものではなく、もっと平凡だ。

ただ、そういう彼が経験する冒険であるゆえに、日常の中にも、好奇心さえあれば、魅力に満ちた世界への扉は常に開かれているのだということに、大きな希望を感じたのだった。

高校3年生だった当時、それまで理系の学部に進学するつもりでいた自分は、「マスターキートン」に大いに影響を受けて、歴史を勉強するために文学部に進学することに決めた。

もしこの本に出会っていなかったら、その後の人生はだいぶ違ったものになっていただろうと思う。