完訳 ペロー童話集(ペロー/岩波書店)
シャルル・ペローが、17世紀に、それまでに伝わっていた民間伝承をまとめて、物語の形でわかりやすく書き残した童話集。
有名どころでは、「サンドリヨン(シンデレラ)」「長靴をはいた猫」「赤ずきんちゃん」「眠れる森の美女」などの童話が収められている。
民間伝承というと、マザーグースのような、意味がわかりにくい、ちょっと不気味な感じがするものかと思っていたけれど、この童話集は、シンプルすぎるくらいにわかりやすい話しばかりだ。
話しの中には、人を食う王妃や、自分の家の地下室で何人もの妻を殺している男など、色々ととんでもない登場人物は出てくるけれど、そういう人物は結局、退治されることになる。
この童話集は、それぞれの話しに作者による「教訓」がつけられていて、要するに子供に聞かせることを一番の目的としているので、基本的には勧善懲悪のストーリーになっているんだろうと思う。
唯一の例外が「赤ずきんちゃん」で、一般に知られている物語は、最後には猟師が狼の腹を裂いて赤ずきんちゃんは助かるというハッピーエンドなのだけれど、それは、オリジナルのストーリーに後からマイナーチェンジを加えたバージョンであるらしい。
この、ペロー版の物語に添えられた教訓は、「誰にでも耳を貸すのはとんだ間違い」。結構すごい結末になっている。
【名言】
「サンドリヨン」の教訓
美しさは女性にとってまれな財産、
みな見とれて飽きることはない、
しかし善意と呼ばれるものは、
値のつけようもなく、はるかに尊い。
これこそ名付け親がサンドリヨンにさずけた賜物、
熱心に仕込み、教育したので、
ついに王妃にまで仕上げえた次第。
(この物語の教訓はこうしたものだろうか)
美しいかたがたよ、この賜物は、美しく髪を結うことよりはるかに大事、
男の心を惹きつけ、目的をとげるには、
善意こそ仙女の真の贈物、
それなくしてはなにも出来ず、それあればすべてが可能。
もう一つの教訓
間違いなく有利なことは、
才知と勇気、家柄と良識、
神よりさずかった天賦の
その他もろもろの才能に恵まれること。
しかしそれらを持ち合わせても無駄なこと、
出世には何の役にも立たぬ、
もし、それらの才能をいかす、
名付け親の代父や代母がいなかったなら。(p.222)