友だちいないと不安だ症候群につける薬
(齋藤孝/朝日新聞社)
【コメント】
中学生を主な対象として書かれている本で、この年齢層と同じ目線に立って、真剣にその問題を解決しようとし、しかも的確な言葉を用いて説明出来る人というのは本当に少ないと思う。
中学二年生(14歳)というのは確かにとても悩み多く、しかも周りからしても扱いづらい年齢だと思うけれども、すべての言葉に耳をふさぐというわけではなく、自分の問題を解決してくれる、筋道がきちんと通った言葉は、敏感に察知して受け容れるものだと思う。
友だちを大事にするべき、いじめはやめるべき、というのを単なる道徳的な観点からではなく、学校生活を楽しく生きるための知恵として説明している。
そこで身につけた友だち力というのは生涯にわたって役に立つものであり、その獲得は早ければ早いほどいいという。
教育に最も重要なのは優れたテキストだというのは、教育学を専門にする斎藤孝さんの持論だけれども、この本自体、子供に読ませたい、とても優れたテキストだと思う。
【名言】
友だち力は社会的な能力として非常に重要で、特に小学校、中学校、高校は、友だち力が高度に要求される社会です。
開放的な大学に比べて小中高の場合にはクラス制があり、そこでうまくいかない場合には、その一年が台無しになってしまいます。場合によっては、三年間がつまらなくなってしまうという深刻な事態を引き起こしかねないのです。そういう意味で高度な友だち力が十代前半に要求されています。(p.15)
「友だち力」を幼少期にどうつけるかは、家庭が重要には違いないのですが、その後、人生のターニングポイントともなるべき重要な「友だち力のゴールデンエイジ」があるのです。それが中学生の時期なのです。小学生の時期は、それなりに社会の中で過ごしやすい時期です。小学生であれば誰もがかわいがりますし、小学生だとみんなが語りかけるし、地域も応援します。お父さんお母さんも熱心に関わります。それが、中学校に入ったとたんに、どこからも見向きされなくなる。それは、端的に言えばかわいくないからです。かわいくないというのは恐ろしいことでして、大人は子供がかわいいうちは自分から関わりたくて仕方ない。ところが、子供が大きくなってしまい、自分の世界を閉じて作ろうとした時には、親や他の大人は身を引いてしまうことがあるのです。(p.206)