ウェブ時代 5つの定理(梅田望夫/文藝春秋)
「ウェブ時代をゆく」「ウェブ進化論」の梅田望夫氏の新刊。
この本は今までの著書とは異なり、シリコンバレーのネット業界にまつわる人々の言葉を集めて、それについて解説をした、名言集のような構成になっている。
やたらゴードン・ベル(DEC社のコンピュータ技術者)と、googleに関係する言葉が多く出て、出典が偏っている気はするけれども、そこに筆者のセンスと個性があらわれていて、単に有名な言葉を集めたものよりも、楽しめた。
引用された言葉自体には、あまりひっかかるものはなかったのだけれど、その言葉についての著者の解説が面白い。
「ネットが負けるほうに賭けるのは愚かだ。なぜならそれは、人間の創意工夫と創造性の敗北に賭けることだからだ。」という、エリック・シュミット(googleのCEO)の言葉はとても好きだ。
梅田氏にも、この、ネットに対しての非常に肯定的な気持ちが常にベースにあるから、どの解説を読んでもワクワクしてくるのだと思う。
【名言】
優れたアントレプレナーに共通する特徴は、人生のある時期に、たいへんな集中力と気迫で、新しい知識を確実に習得している、ということです。貪欲なまでに強烈な意思を持って、自ら道を切り開いていく。好奇心旺盛なアントレプレナーたちは、不確実な未来にいかようにも対応できるよう、徹底して「学び続ける意思」を持ているのです。(p.23)
ハッカー集団においては、誰かが書いたコードの良し悪し、プログラミング能力のレベルは完全に見抜かれ、理解されてしまいます。コードの素晴らしさのみで、互いの序列は決まる。自分を理解してくれる周囲のハッカーによって評価され賞賛されることを何よりの喜びとします。(p.133)
ネットが負けるほうに賭けるのは愚かだ。なぜならそれは、人間の創意工夫と創造性の敗北に賭けることだから。(エリック・シュミット)(p.139)
私がいまグーグルについてもっとも危惧しているのは、彼らの創業のビジョンや会社運営の倫理がたとえ崇高なものであったとしても、人間の集団たる会社をこれほどのスピードで進化させようとする中で、本当にそれを維持できるのだろうかということです。しかしそういう挑戦をすることが、ウェブ進化のペースセッターの役割ということなのでしょう。(p.217)
私がアメリカに来て最初に実感したのは、どこに行っても常に「お前は何者だ」と問われていることでした。お前は何をやっている人間で、どんな実績があり、これから何をしようとしているのかと。(p.226)
エスターはグーグルを高く評価しています。でも、グーグルを倒す人が必ず出てくるという歴史を、また同じくらい好きだというわけです。(p.246)