本音発言


本音発言(江原啓之/講談社)

この本は、インタビューを元に書き起こされたもので、変わった特徴がある。江原さんに対してかなり否定的な意見を持っている人がインタビューをしているということだ。
この本のインタビュアーをしている男性記者のプロフィールがスゴい。
『40代後半。長らく週刊誌の記者・編集者を務めてきた。基本的に「あの世」や「霊」の存在は一切、信じていない。したがって、江原啓之についても「インチキくさい人物」と認識している。それなのに妻や周囲のOLが「江原さんはホンモノよ」と断言し、書籍を買い込みテレビ番組に見入ることに言いようのない不快感を覚えている。対談に臨むにあたり、「スピリチュアルなものを信じないオッサンの代表」として、江原啓之の化けの皮を剥がしてやろうという意気込みを抱いている。』というもの。
週刊誌やワイドショーからのバッシングに対して、怒らずに気にしない、というだけでもスゴいと思うけれど、そこから一歩進んで、積極的にバッシングに正面から回答をしようとする姿勢に驚いた。
気に入ったのは、この手の企画では、最終的にはインタビュアー自身も納得して丸く収まってハッピーエンドという、それこそ、やらせっぽい構成にまとまりがちだけれども、そういう安易なまとめもしていないことだ。
インタビュアーは、ところどころで同意はしつつも、基本的には両者の価値観は平行線を続けながら話しが進んでいく。インタビューアーの質問や発言はいかにも俗っぽい内容が多いけれども、あえてそういう聞き手を相手にしていることで、一般に疑問に思われるだろうという点が余さず尋ねられていて、それがとても良かった。
発想の転換ともいえる、この企画は本当に見事だ。