沖縄は、自分にとって、未踏の地だった。
「どうせいつでも行けるのでは」という思いからスルーし続けて、なかなか行く機会がなかったその地に、行くべき流れが来た。
この亜熱帯の気候は、たしかに独特だ。蒸し暑い。沖縄にいる間に、何度も何度も集中豪雨に遭った。さっきまで快晴だった天気が、次の瞬間バケツをひっくり返したようなスコールが降って、またすぐ快晴に戻る。本土じゃなかなか出遭わない、この極端な気候。このぐらい派手だと、別天地気分が出て素敵だ。
沖縄の人の、シーサーの信仰っぷりは、これはもう一つの宗教の域に達していて良い。たいていの家の門や玄関に、シーサーがきちんと対になって置かれているし、レストランや、マクドナルドでも、入口や屋根にシーサーが鎮座している。やたらとでかくて独特な形の墓も、こだわりを感じさせて好きだ。
真栄田岬にある「青の洞窟」は、素晴らしく美しかった。洞窟に入って、水の中に潜って洞窟の入口の方向を見ると、洞窟に射し込む太陽の光で、真っ青に染まってみえる。
目の前を、小さな魚の大群が通過していく。それが幾層にも重なって、無限に続くかに見える奥行きをもって、はるか遠くまで立体的に魚の群れが広がっている。水の中からそれを眺めていると、宇宙空間の真ん中に漂って、全方位から照らされる星の光を観ているような気持ちになる。
沖縄には、電車も地下鉄もないというのは面白い。沖縄は、都会と自然の両方のエッジが隣り合っている場所だった。国道沿いは24時間営業のチェーン店が立ち並び、やたらと便利なのに、そこから少しはずれると、途端に濃い自然に切り替わる。
この並立が、一つの国の中にあることは珍しくないけれど、沖縄のように限定された地域の中に際立った両方がひしめきあっているというのは、やはりインパクトがある。
マンハッタンの中のセントラルパークとか、ロンドンの中のハイドパークのような人工的な共存の仕方とはまったく別の、素材をぶった切ってそのまま盛り付けた皿鉢料理のような街だと思った。