東大入試 至高の国語「第二問」

東大入試 至高の国語「第二問」(竹内康浩/朝日新聞出版)

あらゆる入試の中でも、東大の現代文の試験というのは、独特な問題が多いのだという。特に「第二問」は、文章を読んだ上で感想や考えを200字以内でまとめるという簡潔な形式ながら、良問ぞろいと言われている。

この本では、過去の様々な「第二問」が取り上げられていて、それを見ると確かに、短いながらも本質的な問いかけをもっている文章ばかりが、見事に揃っていると思う。
この、名作というべき数々の過去問題をまとめて見れるという点で、この本はとても素晴らしいのだけれど、それぞれの問題についての著者の解説は、あまりしっくりこなかった。

ただ、この「第二問」は実に幅広い解釈が可能な問題ばかりで、数学や世界史のように答えが決まっている科目と比べれば、人によってその見方はかなり違うので、解説をしようとすること自体がそもそも難しいのだろう。

特に面白いと思った問題は、
「寅さん」の映画中のセリフ3つから一つを選んで感想を書かせる1992年と、
死を覚悟した国木田独歩が友人に宛てた手紙に対して返信をさせる1982年の問題だった。

名言

次のア・イ・ウは、同じ主人公が登場するシリーズものの映画のセリフである。ア・イ・ウのいずれかを選び、それを手掛かりとして、感じたこと、考えたことを、160字以上200字以内で記せ。

ア「インテリというのは自分で考えすぎますからね、そのうち俺は何を考えていただろうって、分かんなくなってくるんです。つまり、このテレビの裏っ方でいいますと、配線がガチャガチャにこみ入っているわけなんですよね、ええ、その点私なんか線が一本だけですから、まァ、いってみりゃ空っポといいましょうか、叩けばコーンと澄んだ音がしますよ、なぐってみましょうか」

イ「寅さん、人はなぜ死ぬのでしょうねえ」
「人間?そうねえ、まァ、なんて言うかな、結局あれじゃないですかね、人間が、いつまでも生きていると、陸の上がね、人間ばかりになっちゃう−−うじゃうじゃ、うじゃうじゃメンセキが決まっているから、みんなでもって、こうやって満員になって押しくらマンジュウしているうちに、足の置く場がなくなっちゃって、隅っこに居るやつが、アアなんて海の中へ、パチャンと落っこって、アップ、アップして『助けてくれ!助けてくれ!』なんてね、死んじゃう。そういうことになってるんじゃないですか、昔から。そういうことは深く考えないほうがいいですよ」

ウ「梅の花が咲いております。どこからともなく聞こえてくる谷川のせせらぎの音も、何か春近きを思わせる今日この頃でございます。旅から旅へのしがない渡世の私共が、粋がってオーバーも着ずに歩いておりますが、本当のところ、あの春を待ちわびて鳴く小鳥のように、暖かい陽ざしのさす季節に、恋い焦がれているのでございます」(p.31)

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東大入試 至高の国語「第二問」』(竹内康浩/朝日新聞出版)