君を幸せにする会社


君を幸せにする会社(天野敦之/日本実業出版社)

これまでに主流だった経営論、ビジネス論の多くは、戦略として、いかに他の人や、他の会社との差を拡大するか、という点に主眼をおいていたと思う。
事業のユニークネスは何なのか?コアコンピタンスは何なのか?それによって、どのような競争優位を確保するべきなのか?
それは、非常に理にかなった方法ではあるけれど、それによって生み出されることがある悲劇について、この本は書いている。
「差」を作り出すのではなく、「和」を作り出す経営に切り替えた場合、会社というのはどうなるかということを、物語仕立てで表現している本だ。難しい言葉は一切出てこず、かなり読みやすい。組織運営の一つのモデルケースとして、とても参考になる物語だった。
【名言】
他者と競ったり比較したりすることから自由になれば、すべてに感謝の心をもって幸せに生きることができる。
ずっと競争社会にいたクマ太郎にとって、競争しないという考え方には、身体が拒絶反応を示してしまうのだ。
がんばってMBAを取得したのも、人生の成功者になりたかったからだ。お金持ちになって、豪邸に住んで、みんなからちやほやされたい。そんな夢を描いていたクマ太郎にとって、競争しないことは逃げることと同じじゃないかと本能的に感じてしまうのだ。(p.158)
そんなとき、心地いいそよ風が吹いた。
夕日がますます紅くなり、辺りは幻想的な雰囲気になった。
「すばらしいな・・」
クマ太郎は深い幸福感を味わっていた。
その瞬間、クマ太郎は重大なことに気づいた。
「こんなに深い幸福感を味わうのに、今お金が必要だったろうか?いや、一円もかかっていない。本当に幸福を味わうのに、お金は必要ではないんじゃないか」(p.160)