脳は0.1秒で恋をする(茂木健一郎/PHP研究所)
茂木健一郎という人は、学者とは思えないぐらい熱い人だと思う。一応、脳科学の見地から、「脳」という言葉が随所にあらわれるけれども、あまり直接それと関係ある話しはなくて、どちらかというと柔らかい人生論的エッセイに近い。
なるほどと思う部分も、あまりピンとこない部分もあったけれど、著者の基本的な姿勢や人生観には共感出来るところが多いので、読んでいてとても面白かった。
【名言】
通常、人間の脳は何かを考えている時に、より活発に活動しているものなのですが、この「ディフォルト・ネットワーク」だけは特殊で、何か特定のことに目的を定めて考えている時には活動が低下しており、反対に、何も考えていない時に活性化している。いわば脳がアイドリングしている時に、一番活発に働いていることが分かっています。(p.4)
私たちは趣味が合ったり、好きなものが同じ人とは自然に「出会う」と思いがちです。しかし、実際には、共通の友人がいたり、クラスが一緒だったりといった外部的な要因によって出会いは大きく左右されてしまうのです。(p.32)
この世の出来事は、すべて予測がつきません。
どんなに計画を立てて人生を生きていても、どこで新たな「出会い」に遭遇するか分からない。ほんの小さなきっかけで、人生が劇的にうねり曲がる可能性は日々潜んでいます。
ならば、人生をすべて自分の力でコントロールしようとするのではなく、思いきって「偶有性の海」に自らを「投企」したほうがいい。
十年後、二十年後、三十年後、あるいはもっと先の人生の終着点において、「あれこそが自分にとっての運命だった!」と自信をもって語れるような生き方をするのです。
それは言い換えると、「過去がどんどん必然になっていく」人生であるともいえます。そのためには、「偶然を必然に変えていく」力が必要です。(p.151)
他人の意識が分からないというのは、他人と脳を共有しているわけではなく、一人ひとり違う脳を別々に持っているからです。
一人ひとり異なる脳を持ち、異なる意識をもっている以上、僕たち人間は、前提として皆孤独なのです。その前提を理解していないと、「孤独」に対してネガティブな感情を抱いてしまうでしょう。
人はどうしても「孤独」を避けようとしてしまいます。ひとりでいることに対して不安を抱いてしまったり、いつも仲間とワイワイ過ごしたり、恋人と必ず毎日電話やメールでつながっていなければ不安でいたたまれないという意識をもってしまっている。まるで自分以外の人は、皆「孤独」ではないかのように錯覚してしまうのです。
しかし、「孤独」感は誰もが共通にもっている感情です。問題は、いかにしてその「孤独」に感情すべてが支配されないかではないでしょうか。(p.215)