外套


外套(ゴーゴリ/光文社)

信じられないくらい垢抜けない主人公、アカーキー・アカーキエヴィチ。
しかしこういう、地味な生活をこよなく愛する人も、その周りの役人や警官も、いかにも日本にもいそうなキャラクターだ。登場人物こそロシア人の名前だけれど、この「外套」で展開されている物語は、落語に非常に近い感じがあると思った。
訳者の人もそれを意識してか、語り手の口調を江戸っ子調にしているので、一層、これがロシアの話しとは思えない親近感が湧く。
話しそのものは、なんとも物悲しい話しなのだけれど、基調がコミカルなので、マンガっぽい感じもする。悲劇と喜劇は紙一重のものがあり、そのどちらの風味も丁度いい具合にブレンドされた物語であるところに、しみじみとした味わいがあるのだと思う。
ソーシャルブックシェルフ「リーブル」の読書日記