FLOWERS


FLOWERS

ある家族の、昭和から平成にかけての三代にわたる群像劇。
赤朽葉家の伝説」といい、「抱擁、あるいはライスには塩を」といい、こういう種類の物語が、僕はとても好きなんだと思う。女系家族で、女性視点からの語りであるというのも、面白いところだった。
映像の撮り方が上手くて、昭和30年代や50年代当時の色合いや服装がとても見事に再現されているために、本当にその時代を見ているような気分になる。
映画としては、それぞれが単独で主役を張れるような大御所的な女優が6人も共演しているというところが大きな特徴で、その豪華さの点でも、すごい映画だった。
誰か一人を主人公としているわけではなく、6人それぞれの、人生を大きく変えたようなターニングポイントの出来事だけを取り出して見せるような形なので、あまり深く一人ひとりを掘り下げている感じではないのだけれど、その、さらっとした感じまでもが好み。
一族や血統の中に何らかの共通点があったりするわけでもなく、この家族を印象づけるような特別な特徴があるというわけでもない。言ってしまえば、どこの家庭にも多かれ少なかれあるような、些細な日常と、時おり予期せずして起こるハプニングの繰り返しだ。
どんな家族にも、その家族なりの歴史がある。どういう生き方が望ましいかということや、物事の善悪吉凶の因果は、ものすごく長い目で見なければわからないことだし、長い目で観た場合には、結局、すべての出来事があるべき時に、あるべき形で起こっているんだろうという気がする。
子供というのは、親が育てるというだけのものではなく、時代や環境や先祖など、目には見えない様々な要素によって育てられて、不可避的に、その人物でなければ為し得ない役割を果たしていくものなのだと思った。
エンドロールが、またよかった。明確なオチがあるわけではないけれど、映しだされる写真の断片から、その後の未来をなんとなく想像することが出来る。
この先も、何百年と時代が流れても、また同じように人の幸せや悲しみは繰り返し生み出されていくんだろうというような、大きな時の流れを感じさせる映画だった。
出演:蒼井優、鈴木京香、竹内結子、田中麗奈、仲間由紀恵、広末涼子