コミック 文体練習


コミック 文体練習(マット・マドン/国書刊行会)

レーモン・クノーの「文体練習」にインスパイアされて作られた、コミック版。テンプレートとなっている「基本の物語」を99通りの方法で表現している。
テンプレートの物語は、原著とはまったく別の物語で、そこに加えられたアレンジも独特なものが多く、内容的には原著と別物であると言っていい。
面白いのは、絵を用いたコミックならではのアレンジが多いところで、その意味では「文体」練習という枠を超えて、もっとずっと幅広い内容になっている。「この手できたか!」と感心してしまう、驚きのアイデアも多かった。
アメリカンコミックをネタとして使ったアレンジもいくつかあるので、アメリカ人じゃないとよくわからないパロディもあるけれど、ほとんどは、世界共通で通用する内容だと思う。
この作品は、着想が命ということがあり、功績の半分は、元ネタの作者であるレーモン・クノーに帰するけれど、それでも、敢えてコミックで挑戦をしたところは称賛に値する。
【特に面白かった文体】
・冷蔵庫の視点(p24)
・覗くひと(p.26)
・さかのぼる(p.38)
・プラス・ワン(p.78)
・コマの外を描いてみる(p.86)
・時間を固定(p.200)
・マットがいない(p.212)