電子書籍の衝撃


電子書籍の衝撃(佐々木俊尚/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

かなり面白かった。
電子書籍と、日本の出版業界の状況が、ものすごくわかりやすい文章で書かれていて、amazonとアップルの間で、水面下でおこなわれている熾烈な戦いのくだりなど、読んでいてとてもワクワクする。
著者の意見を主張しているという形ではなく、出版の現状と、iTunesの出現によって音楽業界が辿ってきた道とを見ていくことで、必然的におとずれる未来を提示するという形になっていて、説得力があった。
「若者の活字離れはまったく起こっていない」
「ケータイ小説が地方で読まれている理由」
など、一般のメディアの論調とはまったく違う角度から、現象の本質を考えているところも好みだった。
電子ブックリーダーで本を読む人口が飛躍的に増えるであろう今こそ読むべき本と思うし、よくこのタイミングで、素早くこういう本を出せたものだと感心する。
iPadやamazon DTPなどの最新の情報もきちんとフォローアップしていて、かなりタイムリーな内容が多い。
この本自体、電子書籍のコンテンツとして、ダウンロードして読めるようになっていて、4月中旬までのキャンペーン価格は110円だった。それと比べると、通常版の1155円という値段は随分と割高な感じがする。
この機会に、試しに電子ブックリーダーで読んでみなさいというメッセージを込めているのかもしれない。
【名言】
新刊の本に関しては、いまではたいていの出版社は紙の本に加えて、合わせ技で電子ブックの契約もかわすのが普通になってきています。ところが古い本に関してはそうではありません。90年代ぐらいまでは電子ブックのことなんて誰も想像していませんでしたから、「デジタル化された場合の出版の権利」についてはまったく契約書に含まれていません。(p.65)
アップルが底なしにすごいところは、アップルの戦略を真似したアマゾンに対して、まったく逆の戦略を仕掛けてきたところです。
先にも書いたようにアップルは99セントという安価な金額で楽曲を販売し、価格決定権をメジャーレーベルから奪ってしまいました。これをアマゾンは踏襲し、9.99ドルという破格の値段で電子ブックを販売し、やはり価格決定権を確保しました。
そこにiPadを後発で出してきたアップルは、どういう戦略を採ったのか?
なんと、「価格決定権はあなたたちに差し上げますよ。その代わりに30%の手数料だけください」と出版社に提案したのです。(p.96)
「アテンションエコノミー」という言葉があります。人間が活動している時間は有限で、だからその有限な時間を新聞や雑誌やケータイが取り合う。どうやって人々のアテンション(関心)を惹きつけるかが、これからは最も重要なテーマになっているということを表す言葉です。(p.104)
この戦いは、どちらの勝利になるのかはまだわかりません。
垂直統合のアマゾン、アップルか。それともオープンプラットフォームのグーグルか。しかし、いずれにしてもインターネットのプラットフォーム戦争は、このように海千山千のネット企業がアメとムチを使い分け、したたかな駆け引きをしながら展開していく、ものすごい戦場ということなのです。コンテンツを作って売っていればよかった新聞や出版、雑誌などの従来のメディア企業がなかなか太刀打ちできる場所ではありません。(p.119)
いずれにせよ、明確に言えるのはこういうことです--いまの若い人たちは、ものすごく本を読んでいる。
これにインターネット上のブログや掲示板やSNSでの「読む」という行為も含めれば、現在の若者は活字にきわめて親和性の高い世代であるといえます。なにしろネットではユーチューブの動画や音楽配信など一部を除けば、ほとんどが活字メディアです。(p.204)

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