めがね

めがね(3枚組)
めがね

「めがね」というタイトルには深い意味があるのかと思いきや、(おそらく)単に登場人物がみんなメガネをかけているからという理由らしい。
かもめ食堂」と同じスタッフと主要キャストで制作された映画。
「かもめ食堂」にあった独特な空気がそのまま引き継がれていて、続編というよりは、前作と同じ世界のパラレルワールドに入り込んだような気分になる。
大きな共通点は、画面に白い余白が多いことと、セリフとセリフの途中に微妙な空きがあることで、この「間」が、他の作品にはない雰囲気を醸し出しているのだろうと思う。この映画の舞台(どこだかわからない、南の方の島)の住人の、コミュニケーションの距離にも、ちょっと変わった間がある。
前作と違う点としては、「LOHAS」的な思想がテーマとして加わったことだろう。人によっては、その部分がたまらない魅力になるだろうけれど、自分は、そこにはあまり魅力を感じなかった。
とにかく良かったのは、出てくる食べ物がやたらと美味しそうだったことだった。これは「かもめ食堂」でも思ったことだけれど、食べ物をここまで美味しそうに撮るというのは、かなりすごい。それと、風景が美しい。海辺でカキ氷を食べるシーンは、特に素晴らしい。
構成やセリフが、映画というよりは、とても演劇的だと思った。しかし、演劇ともまた違うのは、セリフがなくて映像で魅せるシーンがとても多いことで、この作品では、そもそも、会話の内容に重きが置かれていない。言葉の代わりに、風景と空気で表現しているのだ。
話しの中で「この島にいるには、才能が必要なんです」というセリフがあったけれども、映画を観る人についても、この映画は、世界観にどっぷりと浸かれる人と、そうでない人をはっきりと選別する作品だと思う。
■めがね(2007年)
【キャスト】
小林聡美
市川実日子
加瀬亮
光石 研
もたいまさこ
【スタッフ】
脚本・監督:荻上直子
主題歌:大貫妙子
フードスタイリスト:飯島奈美
市販されているDVDは3枚組で、「メルシー体操 完全版」の映像などが特典として収録されているらしい。