素晴らしい映画だった。
筋書きについて、言葉によってあまり詳しく説明されているような映画ではないけれど、それを補って余りあるほどのメッセージが、映像や表情や、時には誰もいない風景のみを見せることによって、はっきりと伝わってくるようになっている。
映画でしか表せない、間や、息づまる空気のようなものがあって、これは、ものすごいセンスだと思う。その後、小説としても書かれているようだけれど、この空気をはたして文字で表現出来るものなのか?と思う。
単純なサスペンスやミステリーという分類でもなく、ジャンル分け自体がむずかしい。
オダギリジョーと香川照之が、役柄にぴったりと合っていて、とてもいい。検察官訳の木村祐一も良かった。あと、蟹江敬三という人は、「ガイアの夜明け」のナレーションで、声を聞いたことしかなかったけれど、この作品で初めて顔を知った。
面会室での対話で片方の顔がアクリル板に反射して二人同時に映っているところや、自宅で3人で食事をするところを隣の部屋から見ているシーンや、ファミレスで赤い風船が一つだけイスに残っているシーンなど、数えあげればキリがないほど、それだけで絵になるような素晴らしい構図がたくさんあった。
ストーリーは単純であるにもかかわらず、心の深層の不可思議さや不条理さをのぞかせる奥行きがある映画だった。西川美和という監督は今まで知らなかったのだけれど、これは、他の作品も観てみたい。